バスク族
・バスク族は、スペインとフランスの国境地帯(バスク地方)に住むヨーロッパ最古級の先住民族の一つ。
・言語、文化、遺伝的特徴などが他民族と大きく異なり、「孤立した民族」として知られる。
・自らは「バスク人(Euskaldunak)」と呼び、自民族意識が非常に強い。
居住地
・スペイン側:バスク自治州(ビスカヤ、ギプスコア、アラバ)+ナバーラ州
・フランス側:ピレネー=アトランティック県内の3地域(ラブール、スール、バス=ナヴァール)
・山・海・谷が交差する、自然豊かで独特な地形。
歴史
・古代よりピレネー山脈に居住。ローマ帝国にも完全征服されなかった稀な民族。
・中世~近代にかけて、ナバーラ王国を含む独立国家的な体制も存在。
・近代以降はスペイン・フランスに組み込まれるが、バスク語や自治権を巡る運動が活発に。
・現在はスペイン側において高度な自治権(税制・教育など)を保持。
文化
・建築:白壁×赤い木枠の伝統的住宅「エチェ・オナ」など。
・音楽・舞踊(インダラ・ダンス):テンポの速い足技中心のダンス「アウリ・アウリ」や打楽器演奏が特徴。
・料理:ピンチョス(小皿料理)、バスクチーズケーキ、干し鱈料理などが世界的に有名。
・スポーツ文化:球技「ペロタ」や石運び、丸太切りなど独自の競技が盛ん。
バスク族の旗・シンボル

バスク旗「イクスクリーニャ(Ikurriña)」
・赤地に緑の斜め十字と白の十字。
・緑はバスクの自由、白はキリスト教、赤はバスク民族を象徴。
その他の象徴
・ラウブル(Lauburu):4つのカーブした渦が回る伝統的シンボル(太陽と命の象徴)。
・バスク帽(ボイナ):伝統衣装の一部。
言語
バスク語
・バスク語(Euskara):印欧語族に属さない孤立言語(言語的にどこともつながっていない)。
・スペイン側では公用語の1つ(スペイン語と並立)。
・方言も多いが、教育・メディアでは「統一バスク語(Batua)」が使用される。
・話者数:約75万人(主にスペイン側に集中)。
バスク語(エウスカラ)
言語系統と起源
バスク語(エウスカラ語)は、インド・ヨーロッパ語族に属さない孤立した言語として知られています。現代のバスク語は古代のアキタニア語や仮説上の祖語(プロト・バスク語)の子孫または近縁にあたり、西ヨーロッパで唯一現存する先インド・ヨーロッパ的な言語ですen.wikipedia.org。そのため、バスク人はヨーロッパの先インド・ヨーロッパ人の末裔ではないかとも考えられてきました。バスク語と他の現存言語との系統的な関係は確認されておらず、長らく独自に発達したと考えられています。バスク語の起源については諸説ありますが、代表的なものに古代イベリア語との同系説やコーカサス諸語(ジョージア語など)との関係説があります。古代イベリア半島東部で使われていたイベリア語との類似を指摘する学者もいましたが、音体系の偶然の一致以上の決定的証拠はなく、両言語の系統的な近縁性は裏付けられていませんbritannica.com。一方で、バスク語とコーカサスの言語に共通する類型的特徴(文法構造上の類似など)があることから、両者に遠い親縁関係がある可能性を唱える説もあります。しかしこれらは仮説の域を出ておらず、バスク語は現在まで明確な同系語を持たない孤立言語と位置づけられています。
バスク語は先史時代からピレネー山脈西部(現在のスペイン北部~フランス南西部)に住む人々の言語であり、古代ローマ時代にもその存在が確認されています。例えばローマ時代のラテン碑文には、バスク語に由来する固有名詞がいくつか記録されていますbritannica.com。中世以降、周囲のラテン系言語(スペイン語・フランス語など)の影響でバスク語の話者地域は縮小しましたが、それでもバスク語は20世紀まで地域社会で受け継がれてきました。現在ではスペインのバスク自治州やナバラ州、およびフランス領バスクにおいて、公用語や地域語として約70万人〜80万人規模の話者がいます(21世紀初頭の推計)。バスク語は地域ごとにいくつかの方言に分かれますが(19世紀の言語学者ルイ=リュシアン・ボナパルトは8方言に分類)、相互理解は可能で共通の祖語から派生したことは明らかです。1960年代以降、標準バスク語(エウスカラ・バトゥア)が制定され、教育や行政でも用いられています。
言語的特徴
バスク語は膠着語的な性質を持ち、語根にさまざまな接辞を付加して文法関係を表現します
名詞は語形変化が極めて発達しており、名詞句に接尾辞を付加することで文法関係を示しますja.wikipedia.org。主格に相当する「絶対格」、他動詞主語を示す「能格」、間接目的語に相当する「与格」のほか、具格(道具・手段を表す)、共格(…と一緒に)、ため格(…のために)など、場所や方向・起因を含め14種類以上の格が区別されます。これらの格はすべて後置詞的な格接尾辞によって標示され、例えば「gizon」(男)という名詞は「gizon-a(男-定)」が定冠詞付き主格、「gizon-arekin」(男-と共に)が共格、「gizon-entzat」(男-のために)がため格、といった形で活用します。またバスク語には文法上の性(ジェンダー)がなく、名詞や形容詞が男性形・女性形に分かれることはありませんlanguagesgulper.com。これは周辺のロマンス諸語(スペイン語やフランス語)と異なり、たとえば「彼」「彼女」の区別さえ人称代名詞には存在せず、3人称代名詞は性別を区別しません。一人称と二人称には基本形のほか強調形があり、親称の二人称(親しい「お前」に当たる hi)には動詞活用も変化する独特の言い方(聞き手活用)があります。
バスク語では定冠詞も特徴的で、名詞の後ろに接尾辞として付加されます。例えば単数定冠詞は*-a*、複数定冠詞は*-akで、etxe(家)に付けてetxea*「その家」、etxeak「それらの家」という形になります。冠詞は名詞句の最後に1回だけ現れlanguagesgulper.com、形容詞が名詞を後置修飾する場合には形容詞の後ろに付きます(例:「かわいい少女たち」= neska polit「少女 可愛い」+-ak(複数冠詞)→ neska politak)ja.wikipedia.org。このように形容詞は通常、被修飾名詞の後に置かれ、数詞も「1」「2」は名詞の後に付く傾向があります(例:gizon bat「一人の男」)。複数標識も名詞そのものには付かず、冠詞や指示詞などの要素によって示されます。例えば「少年たち」は名詞mutikoを複数化する際、直接名詞を変えるのではなくmutikoak(少年-複)として表します。
動詞も非常に複雑な屈折体系を持ち、主語(能格項)・目的語(絶対格項)・間接目的語(与格項)の人称・数に応じて一語で活用しますja.wikipedia.org。
例えばバスク語の動詞では「~に~を与える」のように、一つの動詞の活用形に「与える人」「与えられる物」「与えられる相手」の情報までも組み込まれます。これを多重対格(ポリパーソナル)の活用といい、バスク語の動詞は人称標識のかたまりを含んだ合成形を取る点が特徴です。
ただし完全な活用体系を持つ動詞(単純活用が可能な動詞)はごく少数(izan「~である」、ukan「~を持つ」など十指程度)しかなく、それ以外の大半の動詞は分詞形しか持ちません。そのため一般の動詞は分詞と助動詞(izanやukanなど)の組み合わせによる複合活用で時制や人称を表現します。例えば「見る」という意味のikusiは単独では時制・人称変化せず、現在形「私は見る」はikusten dut(見る-[1人称単数主語・3人称目的語]-[現在])のように助動詞を添えて表現します。また命令法などを除き、動詞は通常文末に置かれますbuber.net。このようなバスク語の文法は、日本語話者にとっては語順(SOV型であること)や膠着的な形態など類似点も多い一方、能格や多重活用など独特な概念も含むため、習得には特徴の把握が重要です。
文字
・使用文字:ラテン文字(アルファベット)
・特徴的な表記:tx(チュ)、tz(ツ)、z(有声または無声歯擦音)、kなど
・バスク語独自の固有名詞や姓(例:Etxebarria、Azkuna)は国内外で知られる。
バスク語の表記体系
アルファベットと正書法の概要
バスク語には独自の文字体系(アルファベット)は存在せず、歴史的に一貫してラテン文字を使用してきましたja.wikipedia.org。現在用いられるバスク語の表記体系(正書法)は、スペイン語のアルファベット(基本26文字)に「Ñ」を加えた計27文字から成ります。
このうち C, Q, V, W, Y の5文字はバスク語固有の単語には原則現れず、外来語を表記する場合にのみ使われます。さらにフランス語などに由来する借用語では Ç(セディーユ付きC)が用いられることがあり、バスク語のスーレタ(ズベロア)方言の固有表記では Ü(ウムラウト付きU)が用いられる場合もあります。バスク語独自の音を表すため、ラテン文字の組み合わせ(二重音字)も活用されます。
例えばtxは[tʃ](「チャ」の音)を表し、tzは無声歯擦音[ts]、tsは無声歯尖音[t̺s̺]といった細かな区別がありますlanguagesgulper.com。このほかllは[ʎ](に相当する音)、rrは強い巻き舌の[r]、dd/ttは口蓋音的な破裂音[ɟ]/[c]を表記するなど、バスク語正書法には数種類の二重音字・二重音符が取り入れられています。アルファベットの字形自体はラテン文字そのものですが、バスク語では[h]の発音などが地域によって異なります。標準バスク語(バトゥア)では H は発音しない一方、フランス領バスクの方言(北東部)では喉音[h]で発音する場合があります。Jの発音も方言差があり、西部方言ではスペイン語の[j](喉の摩擦音)に近く、他の地域では[y]に近い音で発音されます。いずれにせよ、バスク語のつづりと実際の発音との関係は比較的一貫しており、表音的でわかりやすい表記体系です。スペイン語のように強勢アクセント(ストレス)を示すための発音記号(アクサン記号)は通常用いられず、固有名詞の表記など特殊な場合を除いてバスク語ではáやéのようなアクセント符号は使用しません。つまり、基本的に書かれたとおりの発音ができるよう工夫された正書法になっています。
バスク語の正書法は20世紀に入って言語学者たち(バスク語アカデミー=エウスカルツァインディアなど)によって整理・統一されました。それ以前は地域ごとに表記ゆれも見られましたが、現在では統一バスク語に基づき、学校教育やメディアでも統一的な表記が用いられています。例えばバスク語で「バスク」の意味を持つ単語は、方言差で Euskera や Eskuara など様々な綴りが存在しましたが、標準語では Euskara に統一されています。
バスク文字(レタラ・バスカ)と独特のタイポグラフィ
バスク語には独自のアルファベットこそありませんが、バスク地方には看板や装飾に用いられるバスク文字(Letra vasca レトラ・バスカ)と呼ばれる特有の書体デザインがあります。これは20世紀初頭から広まったタイポグラフィで、バスク人の民族意識や文化を象徴する装飾的な字体として知られていますresearchgate.net。バスク文字の特徴は、アルファベットのAの上に横棒が付く、文字の終端が丸みを帯び膨らむような独特の筆致などに表れますameblo.jp。例えば通常のラテン字体の「A」が山形に尖るのに対し、バスク風の「A」は頂点が直線でカットされ水平になっています。また他の文字も直線と曲線を組み合わせた独特のバランスを持ち、全体に素朴で力強い印象を与えます。
バスク地方の土産物店の看板例。フランス語で「マキラ工房(バスクの杖の製造所)」と書かれているが、文字はバスク文字体で描かれている。Aの上部が水平にカットされ、KやSの端が膨らんだ独特のデザインに注目できる。このようなバスク独特の書体は、20世紀半ば以降バスクの商店や施設の看板で広く使われるようになり、街を歩くと至る所で目にすることができるameblo.jp。バスク文字はバスク民族文化の視覚的象徴ともなっており、その温かみのある独自フォントは観光客から見ても魅力的に映ります。
バスク文字体の起源については、実は中世の石碑や木彫にまで遡ると言われます。現代のタイポグラファーがデザインした**Waskonia(ワスコニア)**などのバスク風フォントは、8世紀頃のバスク地方(当時フランク族からワスコニアと呼ばれた地)の古い墓碑や建物の扉に刻まれた文字に着想を得て作られましたaboutbasquecountry.eus。バスクの伝統的な墓石(hilarria)や家具の文様には、古くから幾何学的な文字彫刻が見られ、20世紀にこれをもとにした商業用書体が復興・普及した経緯があります。現在では「Euskara」という名称のバスク文字フォント集(14書体から成るセット)や、先述のWaskoniaのようにバスク文字を洗練させたデジタルフォントも市販されており、デザイナーらによって現代的にアレンジしたバスク風タイポグラフィも作られています。いずれにせよ、バスク語の文章を表記するときは通常のラテン字体が使われますが、バスク地方の看板やロゴデザインではこのような伝統様式の書体がアイデンティティ表現として好まれています。
バスク語の挨拶・定番表現
日本語 | バスク語 | 発音目安 | |||
こんにちは | Kaixo | カイショ | |||
おはよう | Egun on | エグン・オン | |||
おやすみ | Gau on | ガウ・オン | |||
ありがとう | Eskerrik asko | エスケリク・アスコ | |||
よろしくお願いします | Pozten naiz zuri ezagutzeaz | ポステンナイス・スリ・エサグツェアス | |||
美味しい | Gozoa da | ゴソア・ダ | |||
楽しい | Dibertigarria da | ディベルティガリア・ダ |
地域
大陸:ヨーロッパ
スペイン/フランス
・スペイン:ビルバオ(文化都市)、サン・セバスティアン(美食都市)、パンプローナなど・フランス:バイヨンヌ、サン=ジャン=ド=リュズなど海沿いエリアが中心
・農村部ではより濃厚な伝統文化が残存
言語の起源
・バスク語の起源は明確には不明。
・インド=ヨーロッパ語族以前からこの地域にあったとされる「先住言語」の生き残りとされる。
・謎多き言語として世界中の言語学者から注目され続けている。
バスクの伝統的な遊びや競技
子どもの伝統遊び
バスクの子どもたちには、昔から受け継がれてきた多種多様な遊びがあります。民俗学的な調査によれば、20世紀のバスク地方で記録された子供の遊びは800種類以上にも及び、それらの多くは世代から世代へと口承で伝えられてきましたatlasetnografico.labayru.eus。
遊びの内容は年齢や季節によっても異なり、春夏には屋外で走り回る遊びや自然の物を使った遊び、冬には屋内でできる言葉遊びやテーブルゲームなど、年間を通じて季節性が見られます。
昔の子供たちは身近にある素材で自作したおもちゃを使うことが多く、木の実や石、小枝、布切れなどから手作りした道具で創意工夫して遊びを生み出していました。また、かつては男女で遊びの種類がはっきり分かれていることも一般的でした。
女の子の遊び、男の子の遊びがそれぞれあり、例えば女の子はおままごとや手先の器用さを競う遊び、男の子は体力や冒険心を発揮する遊びに惹かれる傾向がありました。
バスク語には「Haurrak, haurlan(子供の仕事は遊び)」という言い回しがありますatlasetnografico.labayru.eus。文字どおり「遊びは子供にとっての学び(仕事)である」という意味で、遊びを通じて子供は成長するという考え方を表しています。伝統的な子供の遊びには、大人の生活を模倣するものが少なくありません。小さな子供は親や周囲の大人の真似をして遊び、そこから社会性や創造力を身につけます。バスクの伝統遊びの中にも、羊飼いや農作業のふりをするごっこ遊び、町のお祭りの真似事、店屋をまねた遊びなど、子供が大人の世界を再現するものが見られます。また遊びはルールを学ぶ場でもあり、仲間との協調や競争の仕方、大人から子供への文化伝承の機会ともなってきました。
具体的な遊びの種類を挙げると、鬼ごっこやかくれんぼのような走り回る遊び、石蹴り(ケンケンパ)や縄跳びのような跳躍遊び、ぶらんこ(ブランコ)に乗る遊び、石や棒を投げる遊びなどがありますatlasetnografico.labayru.eus。
なかでも友達の背を飛び越える馬跳び(ロバ跳び)や、地面に描いたマス目を片足で跳んでいく石蹴り(ホップスコッチ)は古くから定番の跳躍系遊びでした。
手先の技能を競う遊びも多く、代表的なのは小石や動物の骨で遊ぶお手玉遊び(くるみ取り)です。バスクの女の子たちは羊の足の関節骨(ナックルボーン)や5つの小石を使ったお手玉遊び(バスク語で sakak や bost harri と呼ばれる遊び)を好み、20世紀前半には象徴的な少女遊びとなっていました。
一方、男の子たちに人気だったのは独楽回しや棒投げの遊びです。独楽(こま)を紐で巻いて勢いよく回し、回転時間や技を競うコマ回し(バスク語: tronpa)は特に少年たちに愛された遊びでした。木製の独楽を地面で回し、他人の独楽にぶつけたり手のひらに乗せたりする高度な技も伝承されました。またナイフや鋭い棒を地面に突き立てて遊ぶナイフ投げ(aintzira)や、輪になって歌いながら踊る輪遊び、手を使ったじゃんけんや指遊び、紐で様々な形を作るあやとり、さらには早口言葉やなぞなぞといった言葉遊びまで、ありとあらゆるジャンルの遊びが存在しました。
雨の日にはカードゲームやボードゲームをしたり、本を読み聞かせてもらったりと室内遊びも行われました。男の子は木製の輪を棒で転がす輪転がし、女の子はコマの両端にひもを巻いて操るディアボロ(空中独楽)といった玩具も好まれました。
さらには昆虫採集やシール集めなどの収集遊び、教会祭や収穫祭の際に子供向けに催される競技やゲーム(綱引きや袋跳びレース等)も、伝統的な遊びとして挙げられます。
このようにバスクの伝統的な子供の遊びは非常にバラエティに富んでおり、遊びを通じて子供たちは身体能力を鍛え、機知やルールを学び、文化を受け継いできました。近年はテレビゲームやインターネットの影響で昔ながらの遊びは衰退しつつありますが、地域のお祭りや学校教育で伝統遊びを復活させる取り組みも行われています。例えばバスク地方の一部の学校では体育や課外活動で縄跳びや伝統ゲーム大会を開き、子供たちに先人の遊びを体験させています。また民俗スポーツ大会の子供版(後述する農民競技の子供向けバージョン)も開催され、次世代への継承が図られています。
大人の伝統競技(ヘリ・キロラク)
バスク地方には、古くから大人が参加する独特の伝統競技があります。その代表格がヘリ・キロラク (Herri Kirolak) と総称される一連の競技、いわゆる「バスクの農民競技・力比べ」です。Herri Kirolakとはバスク語で「村のスポーツ(田舎の競技)」を意味し、農山漁村での日常作業に由来するさまざまな力仕事を競技化したものですen.wikipedia.org。バスク人は昔から働き者で知られ、農作業や漁業で培った力と技を誰が一番か競い合う文化が育まれてきました。その延長として、木を切る速さや石を持ち上げる力、荷車を引く馬力などを競技化したユニークなスポーツが生まれ、力や持久力・巧緻性を試す伝統競技として発展しましたfestival.si.edu。バスクの農民競技の多くは、主要な生業だった**農夫(農業)と漁師(漁業)**に起源を持ち、特に農村での仕事に由来する種目が多くなっています。
ヘリ・キロラクの種目にはさまざまなものがありますが、典型的な競技として以下のようなものが挙げられます。
石担ぎ(石持ち上げ競技)
(Harri-jasotzea, ハリ・ジャソツェア):重い石塊をどれだけ高く(または何回)持ち上げられるかを競います。競技で用いられる石は丸や四角の巨石で、重量は100kgを超えるものもあります。バスク有数の石担ぎ名人イニャキ・ペルレナ氏は史上初めて300kgを超える石を持ち上げた人物として有名です。
丸太早切り(斧競技)
(Aizkora proba, アイツコラ・プロバ):太い丸太を斧で素早く切り倒すタイムを競います。競技者は腰の高さに固定した丸太を豪快に叩き、何十回も斧を振るって丸太を真っ二つにします。複数の丸太を次々に切る大会もあり、スタミナと技術が要求される競技です。
草刈り競争
(Segalaritza, セガラリッツァ):広い草地の草を鎌でどれだけ早く、かつ大量に刈り取れるかを競います。広大な牧草地で行うため選手の体力と技術がものをいい、19世紀の民謡にも草刈り勝負の様子が歌われていますen.wikipedia.org。賭け(アプストゥア)として行われることも多く、昔の記録では2時間で何千kgもの草を刈った勝負に多額の賞金や賭け金が動いたことも伝えられていますen.wikipedia.org。
重荷運搬
(xinga eramatea / Ontzi eramatea, チンガ・エラマテア/オンツィ・エラマテア):金属製の重り(またはミルク缶)を両手に提げ、地面に降ろさずにどれだけ長い距離を歩けるかを競いますen.wikipedia.org。重りは片手に50kg程度あり、握力と足腰の持久力が試されます。
藁俵上げ・投げ
(Lasto altxatzea / Lasto botatzea, ラスト・アルチャツェア / ラスト・ボタツェア):滑車を使って藁の詰まった俵(約45kg)を一定の高さまで引き上げ、その回数を競う「俵上げ」や、俵をピッチフォーク(干し草用フォーク)で高く投げ上げる「俵投げ」がありますen.wikipedia.org en.wikipedia.org。俵投げでは規定の高さのバーを越えてベルを鳴らす必要があり、まるで教会の鐘を鳴らすような豪快な光景になります (スコットランドの伝統競技であるシーフ投げに類似)。
二人三脚の綱引き
(Sokatira, ソカティラ):8人一組のチーム同士で行う綱引きです。単純ですが力とチームワークの勝負で、バスクのみならず世界中で親しまれる競技でもありますen.wikipedia.org。
牛馬力比べ
(Giza-abere probak, ギサ-アベレ・プロバク):牛や馬に石の載った橇(そり)を引かせ、その距離や速さを競わせる競技です。人間は動物を御して声で指示を与え、チームプレーで重い荷を運ばせます。元々は農耕や運搬の実用から生まれた力比べで、人間対動物というユニークな構図が特色です。
山岳重量レース
– (Idi-probak, イディ・プロバック 等):重量物を担いで山道を走破するレースや、峠越えの速さを競う競技も行われています。これは山岳地帯での運搬作業に端を発し、山仕事に従事していた人々が自慢の脚力と持久力を競ったものです。
以上のように、ヘリ・キロラクには筋力、持久力、巧みさを競う多彩な種目があります。それぞれの競技はもともと日々の仕事(薪割りや牧草集め、収穫運搬など)から派生したため、道具も身近なものが使われ、競技のルールも作業の要領が反映されたものになっていますen.wikipedia.org。たとえば石担ぎは工事現場での石運びから、丸太切りは薪作りから、俵投げは藁俵の倉庫への積み上げから生まれたとされています。これらの競技は村祭りや見世物として行われるうちに洗練され、地域の伝統スポーツとして定着しました。特にバスク人は古くから腕自慢の勝負に**賭け(アプストゥア)**を伴う習慣があり、力比べの催しでは観客や当人同士が賭け金を出し合うこともしばしばでした。19世紀・20世紀初頭の記録でも、草刈り勝負や牛橇引き勝負に村中の大金が賭けられ、大いに盛り上がったと伝えられています。
バスクの伝統競技は、現在では文化遺産的なスポーツとして公式大会も開催されています。バスク自治州では1970年代に初の地域規模の公式大会が開かれen.wikipedia.org、以降さまざまな種目で地域選手権・世界選手権が行われるようになりました。多くの競技は今でも村の祭り(ヘリアイエなど)で披露される恒例イベントとなっており、夏の祭礼では石担ぎや丸太切りの実演を見ることができますen.wikipedia.org。
例えばパンプローナの有名なサン・フェルミン祭(牛追い祭)では、1985年から重い台車に車輪を付けて坂道を下る**石鹸箱車レース(Goitibehera)**の世界選手権が開催され、祭りの名物行事となっています。こうしたイベントを通じて、地元の若者にも伝統競技への関心が受け継がれています。ヘリ・キロラクの選手たちは今やプロスポーツ選手並みにトレーニングを積み、大会新記録が新聞で報じられるなど、伝統と現代スポーツの融合した存在となっています。
以上のように、バスク族(バスク人)の文化には、独自の言語であるバスク語とその表記体系、そして子供から大人まで受け継がれてきた多彩な遊びや競技が息づいています。バスク語はその系統不明の起源や複雑な文法構造によって言語学的にも興味深い存在であり、看板などに見る独特のバスク文字体は視覚的にもこの民族のアイデンティティを象徴しています。また伝統的な遊びや競技は、バスク人の生活と価値観を映し出し、地域コミュニティの結束を強める役割を果たしてきました。今日でもバスク地方を訪れれば、街角の二言語表示や祭りの競技大会などを通じて、バスク人の誇る言語と文化の一端に触れることができるでしょう。
1. ペロタ(pelota)
・壁にボールを打ち返す球技。手、ラケット、籠などを使う多様なスタイルが存在。
2.アイズコラリツァ(Aizkolaritza)
・丸太切り競技。スピードと力が勝負。
3.ハリャスオ(Harrijasotzaileak)
・巨大な石を持ち上げる力比べ。
4.牧歌的な遊び
・木製の駒、歌を使った数遊び、手拍子リズム遊びなども残る。
紹介動画


データ元(参照文献)
バスク語の起源と言語系統
・en.wikipedia.orgen.wikipedia.org
・britannica.com britannica.com
バスク語の文法的特徴
buber.netbuber.net
・ja.wikipedia.org ja.wikipedia.org
・languagesgulper.com languagesgulper.com
・languagesgulper.com languagesgulper.com
バスク語の正書法
・ja.wikipedia.org ja.wikipedia.org
・languagesgulper.comlanguagesgulper.com
バスク文字体の特徴と歴史
・ameblo.jp ameblo.jp
・aboutbasquecountry.eus aboutbasquecountry.eus
バスクの伝統的な子供遊び
・atlasetnografico.labayru.eus atlasetnografico.labayru.eus
バスクの農民競技
・en.wikipedia.org en.wikipedia.org
・festival.si.edu festival.si.edu